おとり商売のミシン屋を2週間で辞めた話|詐欺トークで高額ミシンを売るサギオカ

ミシン

ミシンの訪問販売営業は詐欺商売

知ってる人は知ってると思うけど、昔あったミシンの訪問販売は「おとり商品」を使った詐欺商売ばかりだった。

広告には5千円~1万円程度の安い商品(おとり商品)を載せておいて、それを電話で申し込んだ家に届けに行った際に高額なミシン(10万円~30万円)を売りつけるっていう商売。

今でもこのミシン商売があるかどうかはわからない。

当時はグレーな範疇だったらしくてギリギリセーフだったみたいだけど、たぶん今は法律的にできなくなって無くなってるんじゃないかな。

当時世間知らずだったボクは、『月収100万円可能!』とか『あなたも独立して社長に!』といった美味しい求人広告の誘い文句に乗ってノコノコ飛んで火に入ったんだ。

教育係の先輩サギオカ

何もわからず飛び込んだボクは、研修のためにサギオカっていう40代の先輩社員に付いて回った。

このサギオカって男が口の巧いやつでね、行った先々の家で高額なミシンを売りつけてたんだ。

やってることはウソばっかの詐欺なんだけどね。

5千円の商品を申し込んだ客に30万円の商品を買わせるなんて、「一体どうやって?」って思うだろうけど、それは簡単な話で客が買うまで帰らないんだよ。笑

こういう居座り商法は詐欺営業の基本らしいけど、サギオカのそれを目の当たりにしたボクは新鮮でビックリしたなあ。

「こんな無茶苦茶な押し売りが、よくまかり通るもんなんだな~」って。

人間の不思議な心理を垣間見る

2週間ほどサギオカに付いて回ったんだけど、この商売の要(かなめ)っていうか肝の部分っていうのは、人間心理の不思議さだと思ったよ。

だって普通に考えれば自分が頼んだのは5千円の商品なのに、20万円、30万円もの高額な商品(高級ミシン)を買わされるなんておかしいじゃない?

でも、そのおかしなことがまかり通っちゃうのが人間心理の不思議。

サギオカは40代の小柄な中年男で正直言って威圧感はゼロ。

普通なら追い帰せばいいのにって思うけど、どこの家に行ってもそんなことしなかった。

ただただ、サギオカのセールストークに押しやられてた。

不思議だけど、どっちがお客なのか分からないくらい立場が逆転してたよ。

もちろん、毎回毎回高額なミシンが売れたわけではなかったけど、少なくとも数万円程度の商品は買わせてた。

ある時、サギオカが言ってた。

「人間って(営業マンに)一旦家の中には入られると、なかなか『帰れ』とは言えないもんなんだよ」

これが電話や街頭でのセールストークであれば簡単にNOが言えると思うんだけど、家の中に上がり込まれた状態だとなかなかNOが言いづらくなるみたい。

コレは意外だった。

ボクは結局、そういう売り方が性に合わなくて2週間ぐらいで辞めたけど、サギオカについて回った先での色々な経験は今でも記憶に残ってる。

悪い奴だってことは分かってるんだけど、サギオカのことは何だか憎めなかったな。

彼もいろいろな事情があってあんな詐欺商売で生活してるんだろう。

世の中ってキレイごとじゃない。

ボクだっていつ何時、そういう立場になるやも知れないんだから。

あの2週間は、いい人生経験だったと思ってる。